おジャ魔女どれみ全話座談会【無印編⑨】

前回
ojamajozadan.hatenablog.com

第45話「サンタさんを救え!」

【ホリ】ちゃんと夢を壊さないように、サンタさんが隠れた形で実在しているという前提で作られてる。

【清盛】子供向けアニメでサンタさんが親であるという話はできないよね。「も〜っと」のアルバムには「ママがサンタにキスをした」が入ってたりはしたけど。

【みか】まあでも最初、どれみたちはサンタなんていないって価値観だよね。サンタを信じてるぽっぷたちはガキって笑う。

【清盛】ぽっぷにサンタを会わせてはならないって、もうどれみたちは大人扱いされてるってことなんだけど、小3にして背負わされてるなあ。

【ホリ】どれみは実際にサンタに手助けする、ぽっぷは夢の中でサンタに会うっていう構図になってるけど、それによってそもそもサンタが親であるという部分を巧妙に隠蔽している。二つの対比の外側に現実があるっていうの、上手いわ。

【清盛】あとこの回はおんぷちゃん的に重要な回でもある。

【ホリ】ここまで罪を犯してきたおんぷだけど、良いところもあるんだっていう。

【みか】おんぷちゃんの話がゆっくり進んでいく。すごく細かいところでそれが表現されるから、初見時はわかりにくかったわ。完全におんぷにしっぺ返しを受けさせて改心させるという形にはしていなくて、一歩一歩ゆっくり知っていく感じで話作ってるよな。


【清盛】このシーン、どれみの家庭とのあまりにも寂しい対比がなされてる。

【みか】おんぷちゃんの家庭も冷え切ってるわけではないというのが後々わかるんだけど、彼女の心の拠り所は両親しかいないから、それが抜け落ちると不安定になっちゃうよな。

【清盛】そこに入りこんできたのがどれみたちであると。

【ホリ】確かにな。そう考えるとかなり必然性があるね。小3の子供がクリスマスを家で過ごせないってのはかなりショックで、どれみがそこの救いになったっていう。
どれみと一緒にサンタを手伝う

【みか】どれみたちと会いに来たのは寂しさが理由だったけど、子どもたちにプレゼントを配って誰かのために働いてるどれみを見て、少しずつ利他性というものを分かろうとするんだよな。

【清盛】ぽっぷの願いのために自分のプレゼントを我慢するどれみたちに習うことによって、自分より他人の望みを優先するという一段上の利他性を実践する。ここで一つ乗り越えた成長が見えるよね。

【みか】大事な回なんだけど、この辺のおんぷちゃんの心情。初見じゃわかんなかったよ。

【ホリ】おんぷちゃんも意志を持って悪をなしていたわけではないからな。ヤバい魔法を使ってたのも、マジョルカと出会ってしまったからってところもある。あんまり実は偏ってなかったというか、まっさらな状態だったってことなんだよな。

【清盛】まあこのおんぷちゃんの不安定さは子供の可変性を示しているんだろうな。

第46話「魔女のかくし芸大会!」

【みか】クラスメイト回かつ試験回。はづきが二人羽織練習してたり、どれみが親指のマジック使ったり、そういうコミカルな動きを楽しむ回だよね。
二人羽織

【ホリ】人間の手品が魔女の魔法に勝つってのは滑稽だわ。

【清盛】魔女界、どんだけ娯楽ないんだよ。

【みか】女王様も手品の練習をめちゃくちゃ覗きこんでくるからな。

【清盛】この回はサンバも初出。

【ホリ】動きがマジで気持ち悪い。

【清盛】専用曲あるの凄いわ。

【ホリ】あと、この回はMAHO堂メンバーが当たり前のようにクラスメイトを助けてるのが改めて凄いと思う。どれみたちとおんぷちゃんの対比で進行してるからな。

【清盛】なるほどね。45話でその軸が一歩進んだところで改めていつもの三人を描くのは意味があるな。

47話『お父ちゃんのお見合い』

【清盛】新年一発目の話。アバンでどれみたちが振袖を着て挨拶をしてくれる。

【みか】新年一発目にあいちゃん回は重いっすよ。


【ホリ】モンゴルを探せ!

【清盛】物語冒頭も初詣に行くMAHO堂三人の話で、はづきは振袖、あいちゃんとどれみは冬服……。

【ホリ】階級を感じるな。

【みか】ぽっぷも振袖着てるんだよね。お下がりなのかな。

【ホリ】ちょっと七五三みある。

【みか】両親と合流したどれみとはづきに気後れするように、食事の誘いを断ってしまうあいこの描写が本当にいじらしい。初詣って家族行事的な側面が結構あると思っていて、だからこそこういう機会に完全な家族の形を目の当たりにしてしまうと、「母親」というピースの欠落をより痛く感じてしまうんじゃないかと。

【清盛】ヘヘに諭されてあいちゃんは幸治の再婚話を一旦承諾するけど、彼女個人の取っ掛かりとしてそういう思いもあったのかもね。

【ホリ】そもそもあいちゃんはお母ちゃんが再婚しているって思い込んでたしな。マジョリカの水晶玉でそれが勘違いだって気付くわけだけど。

【みか】あれだけ魔法をケチってたマジョリカがあいちゃんのために水晶玉を使う描写もいいよね。

【清盛】母親が再婚してないってわかって、どれみたちで幸治のお見合いをぶち壊そうとする。利他性かつ友情の話でもあるんだけど、結構無茶苦茶な魔法の使い方をするんだよね。

【みか】「どれみ」の魔法って大人的な手段を使わなきゃ解決できない問題に直面したときに子供に力を与えてあげるものって描かれ方をしていると思うんだけど、この回は珍しく子どもらしさが出ていて、わがままに近いものがある。

【清盛】幸治に寒いギャグ言わせたりパフェひっくり返したり……。

【ホリ】はづき母回も似たような魔法の使い方だよね。

【みか】こういう子供から大人への反逆の手段として魔法が使われるのは、ワクワクするわね。

【ホリ】あとこの回のおんぷちゃん、いいんだよな。

おんぷ「魔法の使い方間違ってるよ。相手の人に魔法をかけてお父さんを嫌いにさせればいいのよ」「じゃあ、あたしがやってあげようか?」


【みか】サンタ回を通じて利他性をちょっぴり学んだおんぷだけど、やっぱりおんぷの利他性はまだ幼稚なんだよ。

【清盛】利他が自分の価値判断に完全に依拠してるのが視野の狭さを感じるよね。

【ホリ】ただこの後の「あいちゃん、イイ子過ぎるよ。自分の気持ちをもっと素直に出した方がいいよ」ってアドバイスは功を奏してる。ここが素晴らしい。

【清盛】確かに。おんぷの主体的な行動が初めて正しく人に利益を与えた瞬間なのか。

【ホリ】おんぷにしかできなかったアドバイスだしね。ジコチューと批判されがちではあるけど、おんぷなりに構築した哲学は、それはそれで価値のあるものなんだなっていう。

【清盛】おんぷのアドバイスを受けたあいちゃんは真っすぐ二人に自分の想いを伝えるわけだけど、見合い相手のみどりさんの身の引き方も格好良かった。

【みか】あとどれみたちがおんぷに「心を変える魔法は使ってはいけない」って諭す理由が、「禁止されてるし、使うとペナルティがあるから」ってスタンスなのは子供らしいリアルさだと思った。「心を変える魔法」のグロさは子供の視点からは理解できないよね。

48話『おんぷのメールはラブレター?』

【ホリ】この回大好きなんだよな。

【みか】おんぷ回として、中田くん回として、二つの軸で凄い回。

【清盛】パソコンが得意でおんぷちゃんが大好き。大きなお友達の話ですね。パソコン通信っていうのも時代を感じられてよい。

【みか】おんぷちゃんのことが好きなんだけど、自分からアプローチはかけられず常に相手から話しかけられることを待っている、痛がりな陰キャ特有の受け身姿勢が刺さってしまう。

【清盛】廊下の向かいから歩いてきたおんぷちゃんから不自然に目を逸らしちゃう仕草とかね。

【ホリ】やっぱ自分みたいなパソコンオタクがおんぷちゃんなんかに声かけてもな、みたいな感覚もあるでしょ。わかるよ。

【みか】こういうメンタルがキモオタの表象としてキャラ付けされてるのも若干の時代を感じる。

【清盛】おんぷの話をするけど、この頃のおんぷはまだプロ意識に欠けるというか、ファンへの扱いが雑。ファンレターの返信を面倒だからとヘヘに任せて、ヘヘも適当にラブレターみたいな返信をするもんだから大惨事に発展してしまう。

「放せよ、俺はおんぷの恋人だぞ!」

【清盛】オタク怖すぎる。

【みか】プロ意識に欠けるというのもそうだし、愛され方を知らないという話でもある。おんぷのメールにつられて集まったオタクたちの暴動を整理するためにどれみたちが警察に扮したりして奮闘するんだけど、それに対しておんぷは「自分のことでもないのに、どうしてそう一所懸命になれるわけ?私がどうなろうとあなたたちには関係ないじゃない」という、割と根幹に近い問いを投げつける。

【ホリ】おんぷの自己中心的な性質を表現しながら、どれみの聖人じみた利他性を際立たせる重要な問いだな。

【清盛】それに対しあいこが「あたしらやファンのみんながここにいるのは、みんなおんぷちゃんのことが好きやから」って諭すんだよね。

【ホリ】これをあいこが言うのがいいね。前回の話から接続している。

【みか】おんぷの他人との関わりってアイドルとしてちやほやしてくれる程度のものでしかなかったんだけど、この会話でチャイドル瀬川おんぷとしてでなく、瀬川おんぷ単体の人格が愛されていることに気付いたと思うんだよ。自分を愛してくれるのは自分と両親しかいないと思っていたのが、急に世界が広がる。他者の価値が重くなり、それがおんぷに誠実さを身に付けさせる結果に繋がった。

【清盛】世界観の広がりが視野の拡充に繋がるという、すごく真っ直ぐな成長を遂げている。

【みか】集まったファンに対しおんぷは誠実に自分の非礼を詫びて臨時サイン会を開くんだけど、ここでまた中田くんの話に戻ってきて、中田くんはおんぷの裏切りが許せなくてサイン会に参加できない。

【清盛】中田くんの話もちょっとおんぷに似通った部分があって、他人も自分と同じように色んな思いを抱えた人間だっていう理解がないから、喋らずして他人を勝手に決めつけて、勝手に落胆するっていう。

【みか】確かに。コイツが人の心を操る魔法手に入れたら秒で使いそう。

【清盛】この回一応バッドカード回で、中田くんの災難は彼が持ってたおんぷのCDに入ってたバッドカードのせいだって結論付けられるんだけど、どれみだけは「本当にそれだけなのかな?」って言うんだよ。

【ホリ】バッドカード回も洗練されてきてるよね。バッドカードの役割を逆手にとって、魔法の関与しない本人の問題が見落とされるということを指摘している。

【清盛】そしてどれみたちが自分の言葉で中田くんに諭すんだよね。ここが本当に素晴らしい。「中田くんはまだ何もしてないじゃん。大丈夫、話しかければすぐ友達だよ」

【みか】小3の言葉とは思えないな。やっぱどれみはすげえよ。

【ホリ】中田くんのこの学びと、おんぷが人の心を操らなくても話せばわかるんだってことを学んでいくのは結構パラレルかもね。

【清盛】最後中田くんが勇気を出して挨拶をして、おんぷがちゃんとそれに応えてくれるのは希望が感じられてよかった。

【みか】まー希望はないんだけどね。

【ホリ】能登麻美子が笑顔で握手してくれるのと同じでしょ。

【清盛】うるせえ。希望はあるんだよ。俺はおんぷの恋人だぞ。



続き
ojamajozadan.hatenablog.com