おじゃ魔女どれみ全話座談会【無印編⑩】

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49話『パパに会える!夢を乗せた寝台特急

【清盛】神回の話するか。

【ホリ】無印で一番好きな回やわ。

【清盛】序盤の細かい描写の話をすると、おんぷがマッキーとの共演に喜ぶあたりのまだプロ意識甘いところ、ちょっと好きなんだよ。

【ホリ】「#」以降は本当に超人的になってしまうからな。

【清盛】こういうミーハー仕草は無印でしか見れないからレアだよね。

【みか】おんぷの話って本当に難解でさ、この回も正直初見ではよくわからなかった。なんでお前急に改心してんの?って。

【清盛】あいこやはづきと比べた時の、おんぷにとっての父親の位置づけみたいなところも読み取りにくくはあった。

【みか】でも改めておんぷ登場回から丁寧になぞっていくと本当におんぷの成長は丁寧に描かれていて、この回で一つ結実したというのが理解できる。

【ホリ】自分と関係ない他者、ましてや同じ役を奪い合うライバルのあがり症を治すために禁断魔法を使う。本当に真っ当な成長を遂げているよね。「あがり症は治してあげるけど、それはそれとして勝つのは私」ってスタンスなのも格好いい。

【みか】禁断魔法を使うけど、どれみたちはおんぷの行動を非難しない。これが、おんぷが初めて正しい利他性を発揮したことの証左だと思う。

【ホリ】どれみたちは「ルールだから」という理由で禁断魔法を渋るけど、おんぷはケースバイケースでルールを破れるしたたかさがあるから、使うべき場面ではきちんと使うことができる。少なくともかれんちゃんを救えたのはおんぷだけだったと思うし、おんぷの倫理観の方が正しく思えてしまうな。

【みか】ただ、勘定せず気の赴くままに自分のしたいことを真っ直ぐ押し通せる彼女の性質と利他性は、時に危険な組み合わせになるってことも指摘されてると思う。基本的に彼女は自己責任論者だから、自分の身に降りかかるリスクは簡単に引き受けてしまうんだよね。

【清盛】それは51話でも回収される話だな。

【みか】今回もかれんちゃんに使った禁断魔法のせいでお守りにヒビが入ってしまう。おんぷはそれを気にも留めないわけだよね。こういう自分を顧みず他者を助けてしまうダークヒーロー的な気質は危ういと思う反面、魅力でもある。

【清盛】どうなんだろう。おんぷのキャラ的にも、48話からの流れ的にも、おんぷに自己犠牲の精神があったというよりかは単に幼稚さゆえのリスク管理の甘さという話な気がする。

【みか】うーん、自己犠牲とまではいかないまでも、他者と繋がった生き方が染みついたどれみたちに対し、個の生き方が染みついたおんぷの方が自分の破滅に対する責任感は軽いと思うんだよね。だからこそハイリスクハイリターンのギリギリの選択を取れる。そこが変わるのが51話なんだと思う。

【ホリ】あとこの回はねぇ、山内演出が素晴らしい。

【清盛】マジカルステージ後の演出、オシャレ過ぎるだろ。

【みか】パパの寝台特急の発車時刻に間に合わず、俯きながら帰ろうと足を踏み出した瞬間、場面だけが車内に移り変わる。

【清盛】その後車掌室に入っていく中で、今まで陰に隠れていた父親の優しい顔が徐々に浮かび上がっていくあの演出も綺麗だよね。

【ホリ】おんぷがかれんちゃんを助けたように、どれみたちも魔法でおんぷをパパに会わせてあげた。この施し合いがまず素晴らしいのと、おんぷもどれみたちが自分を助けてくれたことにちゃんと気付いて、お礼を言っているんだよね。これに気付けたっていうのも積み重ねがあってこそなんだよ。

【みか】これもまた真っ直ぐな友情の話だよね。美しい。


【清盛】最後は恒例、セピア色の山内画。

【ホリ】やっぱこれがあると締まるな。

【清盛】おんぷの深層意識にある、本当に安心して帰ってこれる場所、という心象風景なんだよね。母親は自分の戦場である芸能界と結びついてるから、これがおんぷにとっての父親の役割なんだなと。

50話『最後の見習い魔女試験』

「あたしたち、ついに魔女になっちゃった!」

【みか】絶望的に似合わないな。

【清盛】この回はそれこそ集大成。

【ホリ】試験に臨むまでのどれみたちの描写も、これまでどれみたちを見てきた側からすると感慨深い。

【みか】1級試験の内容は魔法を使って「ありがとう」と言ってもらうこと。だけど魔法を使ったとバレてはいけない。

【ホリ】これまで利他性の尊さを説いてきた「どれみ」の、最後の試練に相応しい試験内容だよ。

【みか】最初どれみたちは「ありがとう」を貰おうと、まあちょっぴり打算の気持ちが入りながら人助けを行うんだけど、うまく「ありがとう」を言ってもらえない。だけど、最後一つだけ残った魔法玉を、自分たちの合格と引き換えに溺れている子狐を助けるのに使ってしまう。

【清盛】「不合格だ」と落ち込むどれみ達。けれど最後に子狐がどれみたちに向けた鳴き声は「ありがとう」の意を含んでいたから、晴れて無事1級合格になる。

【みか】純粋な利他性が結果的に善い結果を招く、これだけでも美しい寓話だよ。

【ホリ】しかもね、これをおんぷもどれみたちと一緒になって実践するんだよ。今度は禁断魔法じゃなく、ちゃんと相手のことを観察して、慮って、子狐が欲しがっているミルクを出してあげる。

【みか】この時のおんぷちゃんの表情、マジで好き。

【清盛】これまでおんぷもちょっとずつ利他的な魔法を使おうとしてきたけど、禁断魔法を使わず、かつ自分の行った行動に対してわかりやすく反応が返されるのは初めてだから、嬉しいけど、どこかくすぐったいような感情が如実に表れていて、いやあ、凄いな。

【みか】ここの原画描いた人、神やと思う。

【ホリ】どれみたちが魔女になった後の会話で、「おんぷちゃん、最後まで心を操る魔法使わなかったね。どんな気持ち?」ってどれみの問いに対しておんぷが本当にいい笑顔で「いい気持ち!」って答えるところも、しみじみと感慨深い。

【清盛】いい話なんですけどね。でも本当の試練はここからだった。島倉のせいで……。

【みか】どれみたちが不用心すぎるのはあるよ。

【ホリ】今までと違って日中ずっとホウキ移動だったから仕方ない面もある。

【清盛】噂が噂を呼んで、伝言ゲーム的に大惨事になるのはコミカルで面白い。

【ホリ】正直信ちゃんのせいじゃないこれ?

【みか】この回演出も妙に動いて楽しいんだよな。薙刀を振り回すばあやとか。

【清盛】普段は草生えるけど、こういうコミカルに動く話は山吉演出がピタリとはまってる感あるね。

【みか】MAHO堂に集まる人間サイドの面々、そんなことをつゆも知らず帰ってくるどれみ達。

【清盛】ここでおんぷがマジョルカにちょっと意地悪言うところ、初期おんぷの片鱗が見られて嬉しいカット。

【みか】軽口を叩きながら帰ってきた先に待ち受けるのは、クラスメイトとそれぞれの両親。

【ホリ】いやあ、テーマ上みんなにバレちゃうってのはありがちな話ではあるけど、ここで持ってくるか!

【清盛】親は本当に子を心配してるだけっていうのが、もうね……。

【みか】こんなん完全にゲームオーバーでしょ。さすがにどうすんねん。あッ、記憶を消せば……。

【ホリ】いやもう、フリが完璧すぎる。

【清盛】散々おんぷの成長を描いてきておいて、このフリはヤバいって。

【みか】ほな、最終話行くか……。



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