おジャ魔女どれみ全話座談会【無印編⑦】
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第34話「お母ちゃんに逢いたい!」
【清盛】あいこ回3つ目かな。前回母親の存在が明かされたけど、今回ついに本人が登場する。
【みか】あいこの母親が父子の関西人的なやりとりを垣間見て、お母ちゃんがいなくてもちゃんとあいこが幸せに生きてるんだって分かると。この構図の入り方からして凄い。
【ホリ】あいこの父親も歪んでるよなあ。母親からあいこへの手紙を全部捨ててた。酷い話だよ。
【みか】「あいこが見たら苦しむかと思って」って言ってたやん。
【ホリ】いやあ、それ言い訳としても苦しいだろ。
【清盛】まあでも分かるけどな。父親からしたら「なんで母親の役割をちゃんとやろうとしないんだ」って見えてたわけだから。そんな女になびいて欲しくないわな。
【みか】母親も自分の両親との事情があったわけだからね。
【清盛】誰も歪んでないよ。
【みか】けどやっぱ、あいこは可哀想だよ。
【清盛】これとかやり過ぎだろ。許してくれてないんだなって思ったとしても、それを伝えるのはあいこがどう思うかを考えられていない。
【みか】せめて「ごめんね」くらいじゃないのかなって思うよなこれ。八つ当たりに近い。
【清盛】ここ本当にヤバい。まだ小3のあいこが甲斐甲斐しくお父ちゃんの世話してたの、こういう母親からの呪いがあったからなんやなって。
【ホリ】捨ててるのと同じだろこんなん。
【みか】あいこが自分が怪我したから両親が離婚したんだって思い込まされてるのもグロい。そこに対するフォローはしてやれなかったのかよ。
【清盛】まあ二人ともあいことコミュニケーション取れてなかった感じはあるよね。幼児だからしゃーないとこはあるんだけど。
【みか】あいこが母親と会おうとするところで父親の顔がフラッシュバックする。お母ちゃんと話しちゃったら、今の生活は壊れちゃうんじゃないか、お父ちゃんへの裏切りなんじゃないかって。こんなん本来子供がしていい葛藤じゃないんだよ。ホンマにもうやめてくれ。
【清盛】あいこと境遇が近い子供の視聴者って、かなり深くあいこに感情移入してると思うんだけど、さらにその子たちに見せるのがお母ちゃんが別の赤ちゃんを抱えてるところなんだよな。鬼畜過ぎる。
【ホリ】ここまで散々痛めつけておいて、まだやるのかよ。
【みか】こうやってフラストレーションが溜まったところでね。
【清盛】泉南の砂浜で関空連絡橋を背景に、どれみとはづきが涙を流す。
【みか】あいこはこの時相当辛かったはずなんだけど、自分のことで自分以上に泣いてくれる友達がいて、涙も引っ込んじゃう。凄い美しい友達のあり方だなって思う。テーマの「友情」がこのシーンに詰まってるよ。
【清盛】このエピソードはあいこの回でもあり、次のおんぷちゃん登場会に向けた三人の友情の集大成の回でもある。
【みか】このシーンを作るためにあいこを痛めつける必要があったんだろうな。
【ホリ】ショックを受けた子供の視聴者のためにも、ちゃんと赤ちゃんはお母ちゃんの子供じゃなかったんだっていう救いはある。あいこ視点ではそれはわかんないし、結局会えないわけだからバッドエンド的ではあるけど。
【みか】まあ、この話以降もちゃんと積み重ねていきますから。
第35話「転校生は魔女見習い!?」
【ホリ】いや〜。
【みか】いいよねえ。
【清盛】一周目に「どれみ」を見てるときは、まあ楽しめてはいたんだけど、ブヒりポイントは少なかった。おんぷちゃんの登場を待ちわびていたよ。
【みか】見るのがダルかったマジョルカ編とかも、おんぷちゃんがそのうち出てくることを心の支えに乗り切ったってところはある。
【清盛】おんぷちゃんの声、ヤバいよね。
【みか】めっちゃハマってるよ。
【ホリ】凄いよね。ホント。
【みか】アイドルが転校生って、まあ漫画ではよくある展開ではあるけど、リアルな教室にはない光景ではある。
【清盛】ここまでの「どれみ」では割と等身大の小3のクラスメイトを描いてきた。まあ「モンゴル」は除いてだけど。だから、めちゃくちゃカリスマ性を感じたよな。いきなりサイン書いたりだとか。
【ホリ】いや「モンゴル」も等身大だろ!
【みか】「#」以降のおんぷはだいぶ性格変わるけど、この頃のおんぷは本当に自己中心的。1期のテーマ「友情」のアンチテーゼだよな。
【清盛】そうね。34話に友情が一つの完成を見たから、満を持して、って感じだ。
【ホリ】結構この頃って、さとう珠緒とかゆうこりんとか、ブリっ子系が流行った時期だったな。このおんぷの自己紹介とかはそのノリを意識してる感じがするな。
【清盛】結構関先生ですらおんぷをどう馴染ませていこうかって悩んでる感じがするよな。
【みか】まあ、教師も介入しにくいよな、こういう子供。わかりやすい問題起こすわけでもないし。
【清盛】そういう小悪魔な面を見せつつ、玉木とオーディションの話をするときは既に芸能活動へのプロ意識を見せている。
【みか】おんぷの世界ってお父さんと芸能界の二つしかないわけで、そりゃその芸能界を侮辱されたらキレちゃうよね。
【清盛】まあおんぷの中ではお母さん=芸能界になっちゃってるもんな。母親を侮辱されるということでもある。
【みか】こことかもわかりやすくどれみたちに敵意を示してるよね。小悪魔というか、明確に敵だなって感じがするわ。
【清盛】まあどれみたちは遊び感覚で来てるから、それに対して反感を持つプロ意識の描写でもあるとは思う。
【清盛】オヤジーデ、もともと不快だなって思ってたけど、ここで完全に邪悪だと思った。小3に欲情してるのヤバ過ぎるだろ。
【みか】いやいやいや、ジュニアアイドルに欲情するのは当然のことだから! 本当に邪悪なのはそれを作ってる奴らだよ!
【清盛】当然というのを認めたとして邪悪なのは変わりないだろ……。
【みか】どれみが脚光を浴びるのいいよね。はづきとあいこの応援で緊張が溶けるのも、一人でやってるおんぷとの対比になってる。
【清盛】いやあ、ここでどれみがステーキを食べる演技するの、本当にいじらしい。人生で一回しか食べたことない大好きなものを食べてる様子を必死に想像してんだよ。我々がどれみがステーキを食べたときの反応を見れるのはここだけなんだけど、どれがエアステーキって。切なすぎる。
【みか】単純にどれみのまっすぐな愛嬌がちゃんと審査員に伝わってるってのが本当に好きだわ。
【みか】この顔よ。
【清盛】二期以降の呪文の言い方とちょっと違うよね。より小悪魔っぽい感じ。無限に聞いていられるわ。
【ホリ】これは衝撃的だった本当に。どれみたちにも感情移入してしまうよな。「マジ?」ってなるわ。
【清盛】これまでの「どれみ」の魔法って、子供らしい無邪気な願望だったり、純粋な善意で使われていた。こんな利己的な理由で禁断の魔法を使うなんて思いもしなかったわ。
【みか】1期後半のテーマの「心を操る魔法」はここが初出。まさかの禁断の魔法はブレスレットがあれば大丈夫とか言いだした。
【清盛】アリかよ、そんなの。
【ホリ】素晴らしい回でした。
第36話「四級試験はドドドドドー!」
【みか】この回以降、おんぷちゃん主役回じゃなくてもちょいちょい顔出しに来てくれて、そのたびに嬉しくなっちゃうな。
【清盛】ウサギのおんぷちゃんいいなあ。
【ホリ】ほんとにさ、1期のヒールのおんぷちゃん好き過ぎるわ。
【清盛】この回のメインとしては、一応妖精たちと協力して試験を乗り越えるって話やね。
【みか】この回の脚本、大和屋暁なんだけど、競馬が好きだからそれをベースにしたらしいよ。
【清盛】草生えるな、それ。
【清盛】まあ、この回はどれみたちが妖精たちと協力していて、おんぷは妖精と別行動しているってのは一応対比的ではある。
【みか】でも妖精の話、この回ですらこのシーンくらいだよね。10話以来、最近まで妖精に触れられることがなかったから、妖精回はこれ以上やる気ないのかなって薄っすら思い始めてたところに、ロロはそもそも出さないっていう。まあ、確かにおんぷの孤独感を演出するために妖精出していないってのはあるかもしれないけど。
第37話「魔女ガエルがいっぱい!」
【みか】これ地味に神回だよな。
【清盛】まさか魔女ガエルがたくさん居て、落伍者たちのコミュニティを形成してるなんて。この光景ショッキング過ぎるだろ。
【みか】どれみみたいにちゃんと頑張って魔女になろうとする子ばっかじゃないし、マジョリカも結局苦労してるわけだしね。
【ホリ】まあどれみはね、女王様の恩寵があるから。
【清盛】魔女ガエルたちがおんぷちゃんのとこに押しかけたりすると。全然面倒見てくれないけど。
【みか】こいつら、マインドが物乞いに近い。まあ、「も〜っと」では村おこししたりとか自分たちで立とうしている面も描写されるんだけど、この時点でのこいつらは他人から施しを受けることを前提にしている。
【清盛】まあ本当に可哀想な奴らだからね。施しするのは当たり前だよ。
【みか】とはいえ、施されたものに対して文句は言わない。どんなものが出されても工夫して楽しむって心意気は持ち合わせている。小さい遊園地を出されても、文句を言うんじゃなくて自分たちが小さくなって楽しむよっていう。
【ホリ】『最強伝説黒沢』で描かれたような、ホームレスのリアルと、そんな生活の中でも楽しみはあるみたいな話。
【清盛】「どれみ」の中でホームレスを出すわけにいかないからね。
【ホリ】魔女ガエルとしてメタフォリカルに描かれてる。凄い回だよ。
【清盛】子供が見たらコミカルで楽しい回なんだろうけど、大人が見たらグロって思う。
【みか】やっぱこういうの書くの前川淳なんだよな。
【ホリ】誘拐・スリ・ホームレス。
【みか】こんな人が『フレッシュプリキュア』のシリーズ構成なんだぜ。ちょうど俺の世代だった。
第38話「りょうたと真夜中のかいじゅう」
【ホリ】おんぷちゃんが出てから初めてのクラスメイト回。
【清盛】いや、神回ですこれは。
【みか】まあ、良い回っすね。
【清盛】やっぱり小3って、男児らしい趣味がそろそろダサいなってなってくる境界線ではあると思うんだよな。男児と少年の境目というか。
【みか】あー確かに。ニチアサとか見てるの恥ずかしいぜみたいなノリはあったね、この頃。
【清盛】そういうものを友だちとの約束より優先して、「オタク」呼ばわりされる。この頃のオタクってマジで蔑称だろうからね。
【みか】自分の好きなものとコンプレックスを同時に壊してて、こういう描写好きなんだよな。
【ホリ】倒錯した気持ちよさがある。
【清盛】マジカルステージによって自分の憧れてたものと邂逅できるわけなんだけど、ここでライダーでも戦隊でもなく「怪獣」ってのが効いてきてると思う。怪獣って正義の味方ではないわけで、ただデカくて強いから憧れてる。そういう存在が、助けに来るわけでもなく、ただただ自分のとこにやってきて、乗せてくれるだけで本当に嬉しいんだと。
【みか】そうよね。本当に心霊的な崇拝に近い。憧れというか、畏れというか。
【清盛】ライダーとか戦隊モノだと、やっぱ自分がそれになりたいってスケベ心が出てきちゃうと思うんだよね。怪獣にはそういう感情を抱かなくて、もっと根源的な感情なんだよな。
【みか】正直俺の中にはそういう衝動はないから、特異なものに見えた。
【みか】小竹とか木村は怖がるんだな。憧れにはなれないんだ、彼らにとっては。
【清盛】いや、でも二人もこのあと怪獣作るの手伝うわけだから、やっぱ本物の怪獣を見て憧れがぶり返したって感じだと思うけどね。ここで怖がってたのは、憧れの対象でもあり、恐怖の対象でもあるっていう怪獣の二面性が表れてるんだと思う。
【みか】なるほど。
【清盛】「小鳥の気持ち」という子供を謳う曲が流れる演出も素晴らしかったね。
【ホリ】これ結構「ナイショ」の12話にも通ずるところがあるよね。夜に魔法を見せて、それを夢として処理させるという。
【みか】確かにな。長谷部くんとか「ナイショ」の宮本くん回でも似た構成が使われるけど、一つの型ではあるかもしれない。
【清盛】この回、俺は1期の中でも五指に入るほど好きなんだけど、脚本家の喜多川夏音って人、調べても全然情報が出てこない。
【みか】ミステリーだよな、それ。
【清盛】「一番好きなもの」ってテーマで、どれみがステーキじゃなくてマジョリカを作るの意外だったわ。
【ホリ】どれみの魔女に対する憧れが表れた箇所だと思うけど、俺はこういうの好きだな。怪獣もそうなんだけど、子供のファンタジー的なものへの憧れだよね。
【みか】こういうのって初期特有な気がしてるな。結局「どれみ」のテーマって現実で起こることだから、年を重ねるごとにどれみたちも当然現実を見ていくわけで。こういう憧れを素直に出せるのも1期とか2期までよね。