おジャ魔女どれみ全話座談会【無印編⑪】

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51話「さようならMAHO堂

「あたしたち、今日限りで…」 「普通の女の子に戻ります」


【ホリ】キャンディーズのパロディ。

【清盛】子供泣いちゃうよこんなの。

【みか】どれみちゃんいかないで〜

【清盛】前回の続き、みんなに正体を知られて絶体絶命のどれみ達。

【ホリ】どれみたちはもう魔女になる儀式を済ませてるから、「魔女!」って言われるだけで魔女ガエルになっちゃうんだね。

【みか】そう。だけどこの状況を切り抜けられるのは、みんなの記憶を消す禁断の魔法だけ。だからどれみたちは動けないんだけど、おんぷだけは選択肢がある。

【清盛】禁断魔法を使わずに、人の心に触れて、人のために行動して、感謝される良さというのをやっと体感したところで、禁断魔法を使わざるを得ない状況に追い込まれるっていうのが……。

【みか】ここで禁断魔法を使うのをちゃんと葛藤するんだよね。「あと一回だけなら」と言っているように、どれみたちの「禁断魔法を使わない」という価値観を受容した描写でもあるし、リスクを被ることへの怯えが初めて見えたのも印象的だと思う。49話おんぷならこの葛藤はなかったと思うんだよね。

【ホリ】「禁断魔法は使いたくない」「でもみんなを助けなきゃ」って二つの感情の間で揺らぐんだよね。自分の危機でもあるのに、みんなのために魔法を使おうとするんだよ。

【みか】利他を通り越して、ヒーローだよもう。

【清盛】この、覚悟を決めて呪文を唱えるおんぷの悲壮な表情とか、魔法を使った後、今までの葛藤がなかったかのように気丈に振る舞う仕草とか、胸につまされるものがある。

【みか】どれみたちのために魔法を使い、お守りが壊れて昏睡状態になったおんぷ。今度はどれみたちが魔法でおんぷを助ける。このやり取りは49話と近い構図。

【清盛】おんぷを助けるためにはどれみたちは魔女をやめなきゃいけないっていう交換条件もね、「自分がリスクを負って相手を助ける」というおんぷの利他性をなぞっている。

【ホリ】これまで50話かけてどれみたちが魔女になるために奮闘してきた描写は、このリスクをどれみたちが負うことになることへの前フリだったんだな。

【清盛】マジョリカのことは15秒しか元に戻せない。ドドたちともお別れしなきゃならない。何より、今まで自分たちを助けてくれた魔法の力を失ってしまう。ここまで「どれみ」を観た俺たちなら、このリスクがいかに重いかをわかってしまう。

【みか】でもね、ここで彼女たちは大元の、自分たちがなんで魔女になりたかったのかというモチベーションを振り返るんだよね。

【ホリ】ここの河川敷の会話、マジでいいな。
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はづき「いつもパパやママの言う通りにしかできない自分を変えられるかなって」
あいこ「お父ちゃんとお母ちゃんを再婚させられんのがベストやけど、最初は苦労してるお父ちゃんに楽させたろー思うて」
どれみ「好きな男の子に告白する勇気が欲しくてね」

どれみ「でもさ、それってさ、魔法を使わなくてもできるんじゃないかなって」



【清盛】はづきの最初のモチベは「ママを気にせず好きな服を着たい」だったし、あいことはづきは自分の願いの解像度がきちんと上がってる。

【みか】魔法に振り回されることなく、堅実に地に足付けて生きてきたからこそだよね。どれみだって恋愛回を通して、魔法を使わず想いを伝えあっている人たちをちゃんと見てきている。すごく説得力があるよ。

【清盛】どれみたちの魔女をやめるって決断をマジョリカが受け入れるシーンも好きだわ。

【みか】「こうなることは判ってた。あいつらは優しすぎる、魔女には向いておらん」「ワシはあいつらのことを娘のように思っていたからの」

【清盛】最初マジョリカは子供ギライな偏屈婆さんだったのが、どれみたちとの1年間を通してちゃんと彼女らに愛着がわいていたんだなということがわかる、いい一幕。

【ホリ】マジョリカもおんぷと同じで、どれみたちから利他性を学んだキャラクターの一人でもあるんだよ。だからこそ、ここでマジョリカが自分が元の姿に戻れないという現実を受け入れてどれみたちを送り出す展開にもすごく説得力がある。


【みか】眠り姫を目覚めさせるための、最後のマジカルステージ。長尺バージョンのマジカルステージBGMと、どれみたちが泣きながら、力を振り絞って呪文を唱える過去最高に緊迫感のある魔法シーン。見ていて本当に胸が熱くなる。

【清盛】おんぷちゃんが目を覚ますと、これまたどれみたちが泣きながら「よかったよ」って喜ぶんだよね。「生きててよかった」って泣いてあげるんだよ。

【ホリ】美しい絵だ。

【みか】おんぷちゃんが目覚めたのはハッピーエンドだけど、この回はおんぷちゃんを助けた代償、マジョリカたちとの別れで締められる。この終わり方がねえ、またね。

【清盛】看板も外されただの洋館となってしまったMAHO堂を背景に、魔法があたかも一時の夢であったかのように演出される。けれど、魔法は失ってしまったかもしれないけど、魔法を通じて得た経験や、仲間たちはこれから先もちゃんと持続する。感傷的なんだけど、展望が見える一抹の明るさもあって、爽やかな終わり方だ。

【みか】「そうだよね、魔法は使えなくなったけど、あたしたち本当の友達になれたもんね」

【ホリ】「どれみちゃん、友達じゃないわ」「そや!あたしたちは」

【清盛】「大親友や~!」

総括

【みか】「無印」のテーマは「友情」。こうやって見返すと、すごい丁寧に作られてることがわかる。

【清盛】MAHO堂という居場所を設定し、あいこやクラスメイトの話を通して互助的な信頼関係を描きつつ、「友情」のアンチテーマたる個人主義の象徴としておんぷというキャラクターを出した。緻密な設計が感じられる。

【ホリ】「無印」本軸の話だとやっぱあいちゃんとおんぷちゃんの話がズバ抜けて良いね。

【みか】反面はづきちゃんはちょっとキャラが弱く感じちゃったな。

【清盛】はづきの親子関係、ちょっと描写しにくいデリケートさがあるからな。

【ホリ】はづきの話は「#」以降が本番ってとこもある。

【みか】どれみとぽっぷの話も、関弘美姉妹を元ネタにしてるだけあって描写力の高さは感じるが、ドラマとして出来が良くなるのは「#」からだね。

【清盛】とはいえ、「どれみ」そのもののテーマは「無印」で完結している。ままならない現実と戦うために魔法の力を借りるんだけど、最終的に魔法を離れて現実に回帰していく。

【ホリ】普通に「無印」単体で完成されてるよね。

【みか】いや~本当にそうなんだよな。だけど、ここから「#」「も~っと」「ドッカ~ン」と、別ベクトルで完成されたものを出してくるのが「どれみ」という作品のすごさでもある。

【清盛】最後に一番好きな回でも言って締めますか。

【みか】一番好きな回……?

【ホリ】むずいな、それ。

【清盛】いや、正直俺も言った後ね、むずいなこれって思った。

【みか】YouTubeにある「魔女さが」記念座談会の中でも同じ質問を声優陣が受けてたんだけど、宮原永海がね、「『どれみ』という作品はキャラクターみんなが主役で、全員に同じだけ愛着があるから選べない。それが『どれみ』の良い所だと思う」って言っていて、すごく良いこと言うなって。

【ホリ】なるほどね。まあ、そうかもね。

【清盛】無理に一つに決めるのも野暮ってモンでしょう。では、そういうことで。

【みか】お疲れさまでした。じゃあ、「#」に行くか。

【ホリ】「どれみ」は神アニメ。