おジャ魔女どれみ全話座談会【無印編①】

おジャ魔女どれみ全話座談会 参加者紹介

みかんばこ
「無印」11話が放送された2日後に生まれる。春風どれみに対し異常な愛を持っており、特にどれみの心の中の陰の部分をこよなく愛している。ドラマCDをすべて履修するなど、おジャ魔女知識もピカイチ。

清盛
「無印」3話が放送された次の日に生まれる。本座談会の企画者。「どれみ」で家族の温かさを学んだ彼の人生の目標は、娘と一緒に「どれみ」を観ること。先日、おんぷちゃんと恋人になってデートをする夢を見たらしい。

ホリィ・セン
「無印」放送時七歳のリアルタイム世代。山内重保に一家言持ち、彼の演出担当回を見る際には不気味な笑い声を上げる。家族至上主義の解体を目的にシェアハウスを複数運営するなど、「どれみ」的価値観と敵対しそうな一面も……?





【清盛】では「おジャ魔女どれみ全話座談会」、始めてまいりましょう!!!!!

【みか】狂気の企画だ。

【ホリ】いったい何時間かかるんですかね……。

第1話「私どれみ!魔女見習いになる!!」

【清盛】第1話を再生すると、まずこの神曲からはじまるんですよね。

【みか】「おジャ魔女カーニバル」、有名だから前から知ってはいたんだけど、特段好きじゃなかった。でも、全話見ると愛着が湧くし、何より映像がめちゃくちゃ良い。クラスメイトがジャングルジムに勢揃いしててさ。

【ホリ】何気にすごく考えられてるオープニングだよな。

【清盛】クラスメイトの配置やポーズにそれぞれちゃんと関係性が反映されてたり、個性が出てたりしてるよね。「モンゴル」*1みたいな扱いが小さいキャラにもちゃんと目配りされているのは凄い。

【みか】男女で別れて集まってるのもいい。女子はジャングルジム、男子は堀内孝之進像。

【清盛】あとシャボン玉にどれみたちが映るカットも幻想的で好きだわ。あんまり「どれみ」らしくはないんだけど。


【みか】どこか暗く感じるカットだよね。オープニングが終わったあとの、美空町の風景が映るシークエンスも暗くて妖しい感じ。

【清盛】第一話冒頭部の雰囲気って「どれみ」の世界観とはちょっと異質な感じがするよな。

【みか】魔法って暗くて怖いイメージがありますよねっていう導入から始まっている。ここらへん流し見してたけど、見返してみるとちょっと意外だよね。

【清盛】この回で大事なポイントとしては、どれみの魔女になりたいモチベーションだと思うんだけど、コミカルに描かれていることもあってこのあたりも初見だとあんま意識していなかった。


【みか】いやあ、ホンマに可愛らしいわ……。

【清盛】こういうどれみもよく考えるとレアだよなあ。

【ホリ】ふたりとも見始めたころはどれみのことを「クソガキ感が強くて見れない」とか言ってた気がするけど、もうめちゃくちゃブヒっとるやん。

【清盛】あん時は「CCさくら」を見終わったすぐあとだったから、聖女みたいな性格の桜と比較しちゃってたわ。桜より1歳幼い小3とはいえ、子供特有の他責性とかのガキの面が目について、イライラしちゃってた。

【みか】桜みたいな典型的な美少女じゃないしね。

【清盛】ミッ◯―を意識してデザインされたって話だけど、やっぱりマスコット的なんだよな。ブヒれなかった。

【みか】どれみの人格もまだ深堀りされているわけじゃないからね。この1話だけ見て「どれみ」っていう作品を評価できるかといったら難しいラインではある。

【清盛】まあでも、全話見た後に見返すと感慨深いよな。ぽっぷがめちゃくちゃ生意気で、両親も喧嘩してる。そんな家庭の様子を見てどれみが「世界一不幸な美少女だ〜!」って言うんですよね。

【みか】重厚に描写された姉妹愛とか家族愛とかを目にしたあとにこれを見ちゃうとね……。

【清盛】この頃のどれみはまだその大切さが分かっていなくて。そういうところからスタートしていたことに気づくと感慨深い。

【みか】ただ、「こんな家族はあんまり好きじゃない」という子供らしい感情は、よくある話ではある。だから1話を見てたころは、これを軸に話が進むとはあんまり期待しないわけね。

【ホリ】こういう「日々の生活が退屈」みたいな導入からだと、魔法っていう非日常の世界に行きたいって話なのかなって思っちゃうよね。

【清盛】しかし魔法は「どれみ」の中で、日常の中で感じる悩みや願望のために使われる。佐藤順一が「どれみ」の魔法は万能である点で挑戦的だったって話をしてたけど、万能魔法で話を作ろうとすると魔法以外の人間ドラマで駆動させていくしかないってところがあるんだろうな。

【みか】もっと言うと、どれみが現状に不満を抱えているという問題はちゃんとあるわけよ。それは普通の魔法少女モノだと「魔法によって自分ではない誰かになる」みたいなテーマに持っていくと思う。でもこの作品の魔法は「背伸び」なんだよね。子供のままでは解決できないような問題に、魔法によって対処する。そういう魔法の使い方はこの作品に特有だなって思う。

【清盛】その見方をすると、いわゆる変身シーンのことを「おきがえ」っていうのも象徴的だなあ。一人で着替えられるようになることが大人になるための第一歩って話もあったが。

【みか】魔女になることの理由付けとして、マジョリカが魔女ガエルにしてしまったっていうくだりがあるけど、よくよく考えてみるとこれも特異。自分でやってしまったことの責任を果たしなさいって話じゃん。

【ホリ】そうね。

【みか】そのあたりで、魔法が純粋な子供の憧れだよって世界観とは違うように感じたな。

【清盛】まあ、「CCさくら」も桜が最初にクロウカードをバラまくという罪を犯してその責任を負うという筋書きではあるんだけど。ただやっぱり、いきなり1話から禁断の魔法の話をしているし、魔法がきれいなものとして提示されていないって見方は正しい。万能魔法とはいうものの、何でもできるわけじゃない。ステーキ出すけど食えないし。五十嵐先輩をフォローしようとするけど、全部失敗する。

【ホリ】どれみの憧れの男性に対する恋愛のくだりも今後効いてくるよね。

【みか】まきちゃんを見て、どれみが自分の恋愛感情なんて全然本物じゃないんだなって気付かされるんだよな。

【清盛】「わたしは怪我を身代わりにするなんてできないな」。

【みか】いやァ〜、これが二期の最終話に効いてくるんですよ。

【清盛】まあまあ、その話はのちのちやりましょうか。

第2話「私、はづきちゃんになる!」

【みか】やっぱりこの回で重要なのは、はづきと母親の関係が初めて描かれること。母親がすごく過保護で、鬱陶しく感じている。

【ホリ】小3だからね。まだ自分を主張するってところにいけなくて、一足とびに魔法に頼っちゃうんだよね。

【清盛】「どれみちゃんちの子になりたい」っていう願望は、自分の問題を自分自身でどう対処していくかって方向ではなくて、他人になることで解決するっていう姿勢で、すごく子供らしい。

【みか】俺はこの回におけるはづきの問題って、他人から愛されるということが何なのか・どういうことなのかを分かってなかったことだと思う。

【清盛】まあどれみもそうだったけど、この頃の子供にとっては親が自分を気にかけるのは当たり前のことだからなあ。

【みか】どれみちゃんの家の子供になることで、どれみの家族たちがどれみをどのように愛しているのか他人事だからよく分かる。それが翻って自分も愛されているんだなって結論に繋がっていく。

【清盛】そういえば、3話であいこが出てくるから、どれみとはづき二人だけの絡みって何気にこれが最後だよな。もちろん喧嘩回とかで関係は深堀りされはするんだけどね。

【みか】確かにな。キャラが増えていくとどうしても絡むシーンは少なくなっていっちゃう。

【ホリ】どれみとはづきっていうキャラクター性がぜんぜん違う二人が仲良いってのも、小学生らしいよね。

【みか】どれみはどれみではづきちゃんに自分にはないものを持っていることへの憧れみたいなのはあるだろうしな。

第3話「転校生はナニワっこ!あいこ登場」

【清盛】あいこちゃん登場回やね。こうして見ると初登場時は雰囲気が悪い。

【みか】はづきちゃんが「わたしあの人嫌い」って言ってるのも今思うと凄い。

【清盛】で、こういう最悪の関係から、どれみがあいこの家に行って父親と二人暮らしで頑張ってるんだなって知ったり、たこ焼き食わせてもらったりして、好感を抱くと。

【みか】ここのどれみの心理は、ちょっとよくわかんないところもあるんだけど。

【ホリ】いや、どれみが他者にすごく開かれている存在であることが、この時点で提示されているってことなんだよ。

【清盛】会ってすぐなのにあいこのためにひたすら奔走するもんな。偽あいこパパという悲しい存在を生み出したりして。

【みか】嘘で慰めようとしてるわけでしょ? よくないよ。

【清盛】優しい嘘ついたって良いじゃないか。

【みか】まあ、バレなきゃいいのか。

【ホリ】バレてるけどな。

【清盛】まあそういう嘘とか、あいこパパに参観日のことを勝手に言ったりとか、後先考えず他人のための行動をするおせっかい性がわかるエピソードではある。

【ホリ】どれみもまだ全然成長していないから、限定された中での人助けしかできないってのは作品のとっつきにくさかもな。

【みか】初見で見てた頃は、こういうどれみの奉仕精神はテーマ先行な印象がした。誰かのために頑張るっていうテーマを押し出したいからキャラクターにこういう動きをさせてるんじゃないかって。どれみの行動が、裏にいる作り手の都合によって動かされているように見えた。ちょっとどれみが綺麗すぎたかもしれない。

【清盛】いや、「CCさくら」より汚いだろ。この悲しい存在を見てみろよ。

【みか】いやあさくらはあの感じで一貫してたけどさ、「どれみ」はまだそこらへんのバランスを掴みかねてたから……。



続き
ojamajozadan.hatenablog.com

*1:三人の間で使われる花田志乃のあだな